アンドロ梅田…

去年録画しておいた『アンドロメダ…』を見た。

中学生の頃、南葛西という東京最果ての地にもレンタルビデオ屋なんてもんが出来たんだが、そこで見かけたこの映画、「…」と云う余韻に何かロマンチックなものを感じた物だったが、それがとんでもない勘違いだと知ったのはもう大学生で、古本屋のワゴンで100円で売っていたボロボロの文庫本を読んだ時だ。

なんでか三点リーダ。所謂ハードSFで三点リーダ。思うにこれは邦題担当者の最後の抵抗だったのではないかと。

原作の『アンドロメダ病原体』という邦題に硬派な魅力を感じていた担当者、今度の映画の邦題もこのままでと思っていた所、上司から病原体などという禍々しい題名で客が入る訳なかろうという至極真っ当なダメ出しを食らい、手直しを余儀なくされたが不満たらたら、ちくしょうあいつらまるでSFをわかっちゃいねぇとかなんとか、こうなったら伏せ字にしてやるってんで、アンドロメダXXX、これじゃポルノっぽいから中黒だな、ってんで三点リーダと相成った。

とかなんとか妄想する暇があったら内容について少しは語らんと。

と云ってもまあストーリーは原作まんまでクライトンが天晴って事になるんだが、そうなると原作と違う点はなんだって事になる訳で、一番の違いは博士軍団の一人が女性という事だ。

最初は軽く驚いて、こりゃポリティカル・コレクトネスが発動した結果かと邪推したんだが、見終わってみるとなかなかな計らいなのではないかと、これまた妄想の域を出ないんだが、思った。

というのは、この女先生登場してすぐに、「赤いライトは嫌い、娼婦だった頃を思い出すから」なんて云って男先生がガハハと笑うシーンが出てくるんだが、勿論女先生に娼婦だった過去はないだろう。ないという描写はないがあってたまるかである。

なにせ赤いライトである。あまり云うとネタバレなので控えるが、この赤いライトについては監督はぜひとも伏線を張らねばと思っていたのだろう。

そうなると、赤いライト→売春宿、なんて発想で、伏線を思いついたんだが、この伏線を語らせるためには博士は女でなくてはならない。なので原作を改変して女先生にしたんじゃないかと思う。

しかもこのジョークで、この女先生がちょいと毒吐きで少々やりにくいお人柄だというのまで描写している。すごいぜ。

原作を2回読んでるのに赤いライトについてすっかり忘れていた俺も、この伏線のおかげでもう二度と忘れる事はないだろう。まあ文章で読むのと映像で見るのと記憶の定着のうんぬんという事情も大きいだろうが、女先生の存在がやはりでかい。

あととにかく静か、BGMなんて殆どない。あったとしてもちょっとだけ、しかもかなりアブストラクトな音で一瞬効果音かと思うくらい。原作より格調高い気がしてくる。

こんな静かな映画をミュージカル映画で有名な人が監督してるんだから面白いんだが、音にこだわるからこそ音を極小にしたと云えば、なかなか偉そうでもっともらしいことないかね。