音楽で例える
サマー・オブ・ラブでサイケデリアの季節だった1968年、一番象徴的だったのはジェファーソン・エアプレインだったと思う。革命だし。比喩じゃなくて、ほんとに革命。
ジェリー・ルービンが30以上は信じるなって云ってた横で、ザ・バンドのデビューアルバムの中ジャケはメンバーの親戚一同の記念写真だった。1曲目の『怒りの涙』はとてもデビュー作の1曲目とは思えない曲で、ディランによるその歌詞は「父親をそんな扱いする娘ってのは一体なんなんだ」という親父の嘆きで、もうとんでもない保守反動っぷりだ。
- アーティスト: ザ・バンド
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
- 発売日: 2005/07/06
- メディア: CD
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これは時代の本流に対して狙って逆張りした訳でなくて、ディランはオートバイ事故で隠居中だったのでサイケデリアに巻き込まれなかったのと、ザ・バンドの連中はカナダからウッドストックの田舎に引っ越して来たただのイナカモノだったから、まるでオセアニアの有袋類のような存在だったんだと思う。
ただし、移民が生んだディンゴに駆逐されてしまった弱い有袋類とは違って、これがまた天下を取っちゃったんだな。アメリカ人は外部の視線からアメリカを知った訳だよ。
ただ音楽が渋いとか老成してるとか、それだけの問題じゃない。力がある。フリーは『ハイウェイ』でぐっと歌もの路線になってコゾフ脱退のきっかけになったし、クラプトンはインプロが嫌になってクリームを解散したし、室内楽的方法論は海の向こうのパブロックに大きく影を落としている。
「ロック史に残る」って云われる作品って一杯あるけど、音楽性がどうとか評者の好みだとかそんなの抜きで、ただただ「ロック史」を社会科学的に扱おうとした時に、「これは後々にまで事件として語り継がないといけない」と云う作品ってのは本当に少ない。ザ・バンドの『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』はその少ない中のひとつかと思う。
もうね、革新と反動と云った対立軸からもスポイルされちゃってんだよね。
そんな風に思うな〜俺は。そっからするとレッペリはピーター・バラカンに嫌われてる分、まだまだ若いですよ、大丈夫ですw。