呑まして潰して「人を動かす」

俺が最初に仕事をした出向先の上司は、もうこれマキャベリズムてんこ盛りと云った塩梅の人で、今の会社の社長さんはこれがまた全く逆でスガスガシーくらいの性善説信者でありまして、このギャップにクラクラ来る事もしばしば。間取ってよ、間!

お酒に関しても、前者は当然の如くウワバミ、後者は下戸も下戸。

今うちの会社には、社会的ならびに倫理的にかなりグレーゾーンなお客様がおりまして、よくまあそんな仕事取ったなあと思ったんですが、まあ色々としがらみがあったらしく。社長、生意気云って済みませんでした、お察し致します、と思いましたよ。ううー。

そのお客様の飲み会に誘われて、社長は思い切り潰れちゃったそうでして、「いやーあれで絶対契約破棄になると思ったよー助かったー」と漏らしてたんですが。

逆ですよ、逆!こんな絶好のチャンス逃す訳ないでしょ。相手は海千山千グレーゾーンに生きる人達です。

そりゃ明らかに潰されたんですよ。

と社長にゆってあげたら、目をまん丸にして呆気に取られたって表情でした。そんな莫迦なとお思いでしょうが、ここで前の上司が登場致す訳です。

その上司の会社と、別の会社が協業した事がありました。別の会社が営業して、上司の会社が要件定義から開発までやる。ここで営業フィーだのなんだの、腹の探りあいがある訳で、そんな中で両社交えてのキックオフの飲み会にて。

一次会では高橋尚子は凄いねーありゃ金メダル取りそうですねー(うわーもう6年前か)なんて差し障り無い話で盛り上がりまして、お互いしこたま呑みました。別の会社の営業さんはかなり顔が赤くてすんごいご機嫌。

で、その営業さんがトイレに立った時、上司が俺に耳打ちをしたのです。

「お前はもう帰れ。俺は今からこいつら歌舞伎町連れて行って、潰しにかかるから。一旦失態を見せると次の時から絶対に弱気になるから、まあ見てみー」云々。

どわーこえー、流石、光クラブ山崎君を崇拝する男だ!とちょっとした感動を覚えつつ、俺は適当に挨拶して退散した訳です。うーむ、資本主義の尖兵、恐るべし。

果たして、次の打ち合わせはもうそりゃ上下関係ばっちり出来てましたよ。こっちは作り逃げで保守は向こう任せってのも決定、お金もかなりよくって、別プロジェクトで工数出てる人間ばっかりアサインしたら粗利が限りなく100%近くになっちゃって、どう報告したもんか逆に困ってました。

失態ってどの程度のもんなのか定かではないですが、酔って吐いた位じゃこうはならないよなー、酒って恐いなーと思った出来事でした。

酒に頼り過ぎるのも恐くて、その後、あるお客様の情シスさんが下戸だったばっかりに、途端にデスマ一直線。酒が無きゃ懐柔出来んもんだから、ありゃ誰を恨めばいいのでございましょうかって話でしたよ、ホント、酒は恐い。

ちゃんと仕事しようよ、って至極真っ当なオチで御座居ました。